Quantum Field|場・重ね合わせ・観測

2026年3月29日(日)〜4月21日(火)
日・月・火 11:00–17:00
20世紀初頭に誕生した量子力学は、それまでの古典物理学が前提としてきた決定論的な世界観を大きく揺るがしました。そこでは、世界はあらかじめ確定した実体として存在するのではなく、観測という行為を通じて初めて一つの姿をとる可能性が示されています。
量子力学において、物質は確定した存在ではなく、複数の可能性を内包する確率的な状態として存在します。そして観測という行為を通して、はじめて一つの状態として現れます。
観測者は現象の外部にいるのではなく、世界の成立に関わる存在として位置づけられます。
重ね合わせ、不確定性原理、観測問題、量子場理論などの概念は、「実在とは固定された実体である」という近代的な形而上学に問いを投げかけ、客観主義を基盤とした近代的世界像の再考を促しました。このような思想的転回は、現代美術の領域とも深く響き合っています。
本展は、この量子的世界観を手がかりとして、作品と鑑賞者、空間とイメージの関係を見つめ直す試みです。
本展出展作家の一人、小川信治の絵画は、写真資料を参照しながらも、像を一義的に固定することを避けています。輪郭の揺らぎや焦点のずれ、光の拡散によって、イメージは複数の解釈の可能性を含んだ状態として提示されます。鑑賞者の視線という観測行為によって意味は一時的に立ち上がりますが、それは固定されたものではありません。このような構造は、量子力学における「重ね合わせ」の概念とも重なります。
また、藪陽介と畠山雅弘の二人で構成されるアートユニットneutral production は、空間そのものを媒体として作品を展開します。光や素材、身体の動き、視線の変化などが相互に作用し、空間は固定された構造ではなく、変化し続ける「状態」として現れます。作品は個別のオブジェとしてではなく、空間全体の関係性の中で立ち上がる現象として体験されます。
量子場理論が粒子を場の揺らぎとして理解するように、彼らの作品もまた、物体ではなく関係性の中から生まれる出来事として提示されます。
本展では、量子力学および量子場理論が示した「世界は実体の集合ではなく、相互作用と確率によって構成される」という視点を、美術の領域において探ります。artist : 小川信治 neutral production ほか
