GALERIE ASHIYA SCHULE ギャラリーあしやシューレ

絵画と輝度

石橋志郎 Shiro Ishibashi

luminous, 2019 photo by takeru koroda

11月9日(土) - 12月14日(土)

OPEN  | 11:00-17:00
CLOSE | 日曜・月曜は休廊


11月9日(土)15時より、アーティストトーク並びにレセプションを行います。

ギャラリーあしやシューレでは、2019年11月9日(土)より、「石橋志郎展 輝度と絵画」を開催いたします。
石橋志郎は1981年大阪府豊中市生まれ、2007年京都市立芸術大学大学院修士課程絵画専攻を修了。日本画における顔料の「粒子」を手掛かりに、空間に放たれる光の輝きを追求してきました。
石橋の描く画面には、空や雲のイメージが映し出され、今そこにある光と風の揺らぎを写しとったかのようにみずみずしい世界を創り出しています。
本展では、日本画における「輝度」をテーマのひとつとして、顔料の持つ新しい可能性を提示する作品を紹介いたします。
自然光があふれるギャラリー空間で、作品が放つ光がどのように表現されるのか。日本画における新たな感覚を切り開く表現を、是非ともご高覧いただきますよう、よろしくお願いいたします。


絵画の光学
平田剛志(美術批評)

絵画に輝度はあるだろうか。絵画を語る指標と言えば、色彩の三要素と呼ばれる色相、明度、彩度がある。色彩の種類、明暗、鮮やかさの度合いを示すこれらの指標は、絵画制作や美術史、心理学や科学の法則として受容されてきた。
だが、絵画において「輝度」という言葉は耳馴染みがない。それもそのはず、輝度とはコンピューターやテレビ、スマートフォンのディスプレイなど液晶画面の明るさの尺度を示す言葉だからだ。
石橋志郎の個展「絵画と輝度」は、絵画に色の三要素ではなく「輝度」を取り入れるという。
言うまでもなく絵画は光源を持たない。夜闇に浮かぶ月、夕日や水面にきらめく光など、人は絵画に描かれた風景や静物など色彩を通じて「光」を見てきたからだ。
一方、石橋は具体的なモチーフを描かず、岩絵の具を何層も塗り重ね、灰白色の形象=物質から光が漲る絵画を生み出してきた。
なぜ石橋は本展で「輝度」を主題としたのだろうか。それは、近代の日本画が西洋の色相環や色彩学に基づいて制作、思考されてきたことに対する見直しであり、アップデートを図るためではないか。
絵の具が美しい。そう語る画家は多い。とくに日本画家は岩絵の具の発色、鉱物に由来するきらめく粒子の魅力を語る。だが、実際の画面から岩絵の具の物質がもつ「光」の美しさを感じることはまれだ。その理由のひとつは、油彩画的な描画法を日本画材で模倣して厚塗りで描き、岩絵の具が本来持つ特性である「光」を封印してしまうことにある。対して、石橋の発光する絵画=画面は、西洋絵画の表現や技術を範として作られた人工的な「光」ではなく、日本画材の性質に委ねて生まれた自然な「光」の現象なのだ。
石橋の日本画材に委ねて生まれる純度の高い光の画面は、伝統工芸に縛られない漆芸作品を制作する石塚源太の試みとも重なるものだ。石塚は漆を塗り重ねて艶のある透明な皮膜をもつ立体や平面作品を形成する。対して、石橋は岩絵の具を塗り重ねることで、微妙なグラデーションをもつ白光する絵画層を形づくる。両者の作品は感情にまかせるのではなく、伝統的な素材や技術を鍛錬し、手によって実体化された「光」が満ちている。
ディスプレイの輝度を設定できる現代、石橋は日本画を光学的に探求し、輝度を再設定することを試みる。はたして石橋の描く絵画の輝度とはどのような輝きなのか。日本画の可能性を示す新たな光を展覧会場で受けとめたい。

絵画と輝度
石橋志郎

輝度とは、光源の明るさを表す心理物理量のひとつです。普段、見慣れているコンピュータやスマートフォンなどのモニターの明るさを表す言葉として使われることがあります。
私の絵を観てくださった方々から、「絵が内側から発光しているみたい」「液晶モニターを見ている感じがする」という感想をいただくことがあります。絵の中の、主に白い色面に対しての反応です。その反応を私なりに咀嚼していく中で、この色面のもつ現象に対して<輝度>という言葉を使ってもいいのではないか?そんなふうに感じ始めました。
当然のことですが、絵画自体は光源ではありませんので、これまで絵画を表す尺度として、<輝度>が使われることはありませんでした。絵画に<輝度>という要素を取り入れるとどうなるのか?これまで当然とされてきた絵画の制作の仕方とは異なる、新しい絵画との関わり方がそこに生まれるのではないか。
絵画と輝度について探っていくことは、私にとって日本画の素材である顔料(岩絵の具や胡粉など)のミクロ単位の粒子の新たな可能性を探ることでもあります。日本画の素材には、まだまだ輝度にとどまらない新たな絵画表現への可能性があると感じているのです。




Copyright 2014 GALERIE ASHIYA SCHULE. All Rights Reserved